近年は心理学的な考え方をビジネスに取り入れることが非常に多くなっています。
悪い事ではありませんが、そればかりに意識を持って行かれると実際の仕事に悪影響を与えてしまうので注意が必要です。
ロボットのように働けという訳ではなく、仕事と感覚的な部分というのは切り分けた方が物事はスムーズに進めることが出来ます。
承認欲求が上手く仕事に作用した話などを聞いたことがありますが、実際は自分のストレスの原因になっている事の方が多いはずです。
承認欲求は高いレベルの欲求
心理学で承認欲求などの話になった時に必ず話に上がるのが「マズローの欲求5段階説」です。
出展:総務省 ICTによる人間の「拡張」の生活・働き方への影響より引用
- 第1段階 生理的欲求
- 第2段階 安全欲求
- 第3段階 社会的欲求
- 第4段階 承認欲求
- 第5段階 自己実現欲求
生理的欲求は今回あまり関係ないので割愛します。
図を見てわかる通り承認欲求は上から2番目に位置するかなり上の欲求です。
ある意味嗜好品のようなものなので人によっては全く承認欲求がないという方もいるでしょう。
基本的に仕事・職場において強く影響するのは第3段階の社会的欲求からです。
どこかに所属していたい、集団に入りたい、仲間が欲しいと言った欲求です。
帰属欲求とも言います。
SNSに例えると
- Twitterをやっている、その中で特定のコミュニティに属したい・属している=社会的欲求
- フォロワー増やしたい、いいねやリツイートがたくさんほしい=承認欲求
- Twitterをビジネスにつなげたい、絵などの作品を投稿したい=自己実現欲求
近年では終身雇用の崩壊に伴い転職、退職が当たり前になっているので社員の会社への「帰属意識が低くなっている。」と言われます。
転職や退職が増えたのはライフスタイルの変化や被雇用者側の選択の幅が増えたことの影響なので、帰属意識どうこうは関係ありません。
「コミュニケーションをとることで帰属意識が高めて風通しのいい会社を!!といった生徒会のスローガン的なものより先にお金を払ってほしいですね。
帰属欲求もはき違えるとやりがい搾取の標的になる。
仮にあなたが新しい職場に就職した場合、その集団と早くなじみたいと感じるはず。
これが帰属欲求、誰もが持つ欲求なので何らおかしなことではありません。
ただもしあなたが仕事や職場に不満を持った時に、帰属欲求が勝って不満を押し殺したとしたら猛烈なストレスになります。
転職や退職の時に上司から言われる言葉ランキングTOP10に入ってくるであろう
ここで通用しないんじゃどこに行っても通用しない。
これは第3段階の社会的欲求のさらに下である第2段階の安全欲求を揺さぶる言葉です。
人間が持つ最低限の安全に対する安心感を脅かされた結果、その上の社会的欲求も当然のように否定されることになります。
もしこの言葉に納得してしまったら、相手にとってあなたは何も主張が出来ないカモという事になるので、やりがい搾取の標的になるでしょう。
当然ですが「ここで通用しないんじゃどこに行っても通用しない。」には何の裏付けもないので信じる必要はありません。
世の中いくらでも仕事はありますし、そんな言葉を口にする人間よりも誠実で楽しく接することが出来る人間は山ほどいます。
社会的欲求は人間が社会生活を行う上で基本的な欲求の一つなので完全に切り離して考えるのは難しいですが、実際に所属する時・した後に所属して快適かどうかはしっかりと考える必要があります。
職場は仲良しこよしする場所ではないとはいえ過ごしやすい方が良いのは言うまでもありません。
承認欲求は後払い制
続いて今回の本題である承認欲求について。
承認欲求が満たされるのは仕事が終わってからです。
仕事をする➡結果が良い➡称賛を受ける➡承認欲求が満たされる
つまり完全に後払い制です。
これを見ただけで承認欲求を満たすのに色々とステップが必要になることがよくわかります。
他者からの行動も必要になり、その評価で満たされたかどうかを判断するのは自分自身なので、最終的に不満が残る可能性が高くなります。
承認欲求の中身
- 存在承認 存在を認知されている感覚、度を超すと認知厨なります。
- 行動承認 行動やプロセスを褒めるなど
- 結果承認 結果を褒める
細かく分けることは出来ますが、何も達成していない人間を褒めるのは中学生までです。
承認欲求が満たされないとモチベーションと自己肯定感が劇的に下がる。
承認欲求が満たされないとどうなるかというと仕事に対してのモチベーションと自己肯定感が劇的に下がります。
であれば極端な評価制度などは取り入れるのはリスクの高いと言えます。
承認欲求の強さ・タイプは人によって違う。
承認欲求の強さ・タイプは人によって違うので、仕事のどの段階で承認欲求が満たされるかも人によって違います。
普段の仕事でも作成した資料の出来を褒められることで承認欲求が満たされる人もいれば、給料が上がったり出世しない限り満たされない人もいます。
もし自分が会社の評価制度に合わないタイプであった場合、承認欲求が満たされる可能性が低いという事になるので、それをストレスに感じるのであれば職場を変えるしかありません。
しかし転職するほどではない場合は完全に承認欲求と仕事を切り分けて考える事が重要です。
承認欲求と仕事を切り分けるとストレスが減る。
仕事は基本的にストレスを感じることなのでストレスの要因を取り除いておくと比較的快適に行うことが出来ます。
過去にの記事で人間関係はドライにした方がいいと書いたようにストレスの要因まみれではなかなか暮らしを送るのは難しいと思います。
ストレスを感じたくない人は承認欲求を切り分けましょう。
こんなに頑張ってるのに評価されない…。
こんな感じでストレスを感じると思うのですが、評価する側にも
このぐらいやったら評価する。
いくら頑張ろうが仕事だから褒めたりしない。
と色々な人間がいるので仕事で承認欲求を満たそうとするのはマイナス要素の方が多いです。
承認欲求は目の前にぶら下がったニンジン
承認欲求を刺激して仕事をやらせようとするのは馬の前にニンジンをぶら下げて走らせるようなもの。
仕事の範囲・内容は明確にしなくてはいけない
筆者は個人事業主になってから感じたことですが仕事の範囲・内容が漠然としていると、どのぐらい頑張ったらいいかいまいちわかりません。
そこら辺の判断の線引きに非常に神経を使います。
万が一仕事内容に不足出ると後々めんどくさいので前準備も含めて結構頑張ることもありますが、明確に範囲の決まった仕事であれば最低限の仕事しかしなくて済みます。
つまり仕事の範囲が決まっているのに承認欲求を求めたりすると無駄な頑張りが発生します。
もちろん「より良い仕事をしたい。」という理想の高い考え方を否定する気はありませんが、雇用主側が被雇用者にそれを求めるのは間違っていると感じます。
例えばイラストを外注するのに絵のクオリティもそうですが、カラーかどうかで費用が変わります。
そこで「より良い仕事を目指してモノクロの依頼料だけどカラーにしよう!!」とはなりません。
もし依頼主がこんなことを言ってきたら即断ります。
つまり承認欲求は仕事で完全に邪魔になる存在です。
ぶら下げられたニンジンを追いかけるのが好きならばかまいませんがオススメは出来ません。
実際に「転職のきっかけ」になっているアンケートで上位に来ている理由というのは全て承認欲求が関係しています。
『エン転職』1万人アンケート(2020年8月)
「転職のきっかけ」実態調査転職を考え始めたきっかけは「やりがい・達成感のなさ」「給与の低さ」「人間関係」。
全ての仕事を明確にすることは難しいかもしれませんが、キッチリとした線引きというのは自分と相手の双方の為になるので非常に重要です。
まとめ
承認欲求は人間だれしも持っている欲求です。
そのため完全に切り離すことはできませんが仕事と切り分けて区別することは可能です。
人に仕事を頼む時に仕事の範囲・内容をきっちりとした線引きをしないで「やってよ~」とか「プロなんだから」「いつもお願いしてるから頼むよ~」のように気分でやっていると単純に信用を失うのでやめておきましょう。
相手の人間も少なからず承認欲求があります。
それを刺激して仕事をさせるという事は相手にストレスを与える原因になるという事です。
自分が仕事だけでなく相手にもそうした欲求があることを理解して切り分けて仕事をする事で無駄なストレスが発生しないようにしましょう。
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